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新宿三丁目紀伊国屋ホール(中村うさぎ × スタジオライフ × 新宿三丁目新聞)

新宿三丁目に位置する「新劇の甲子園」とも呼ばれる老舗劇場「紀伊国屋ホール」にて、現在、スタジオライフ主催、手塚治虫原作の舞台「アドルフに告ぐ」が公演中です。

1ヶ月間という長期公演に挑戦中のスタジオライフ様より、この度、新宿三丁目新聞は舞台鑑賞のご招待いただきました。

スタジオライフと言えば、女性役も男優がこなす事から、男性版宝塚とも言われ、多くのファンを抱える劇団ですが、舞台鑑賞後、取材を試みるも・・・。
感受性が乏しい新宿三丁目新聞では、この名作を多くの方々にうまく伝えられないのではないか?という懸念の元、今回は、普段から新宿三丁目界隈で食事や買い物をされるという小説家・エッセイストの中村うさぎ先生に取材を依頼させていただきました。

 

新宿三丁目新聞
「『アドルフに告ぐ』という作品はご存じですか?」

中村うさぎさん
「知ってるよ。名作だから興味はあるけど、読んだ事はない。」

新宿三丁目新聞
「舞台鑑賞のご招待をいただきました。ご一緒しませんか?」

中村うさぎさん
「いいよ。」

新宿三丁目新聞
「いいのぉぉぉ?舞台鑑賞後、新宿三丁目新聞で取り上げたいので、取材していただいても良いですか?」

中村うさぎさん
「いいよ。」

新宿三丁目新聞
「いいのぉぉぉ?」

 

という具合に、二つ返事が男前な中村うさぎ先生と舞台鑑賞後、取材させていただく運びとなりました。

 

中村うさぎ

   

×

スタジオライフ

   

×

紀伊国屋ホール

   

×

新宿三丁目新聞

 

ナニコレ?笑。

今回は特別企画として、この様な異色の組み合わせによる記事をお楽しみください!!!

 

新宿三丁目新聞の読者の皆様、こんにちは。

中村うさぎです。

 

ただいま新宿紀伊国屋ホールで絶賛上映中のスタジオライフの「アドルフに告ぐ」を観劇してきました。

スタジオライフ」は演者が全員男性という一風変わった劇団。もちろん女性役も男性俳優が演じます。

手塚治虫の原作漫画「アドルフに告ぐ」を彼らがどう演じるのか、そして手塚治虫がこの作品に込めたメッセージをどのような形で伝えるのか、そこに彼ら独自の解釈がどんなふうに混じり合っているのか、いろいろと興味深く舞台を観ました。

舞台はなんと、「日本篇」と「ドイツ篇」の二部構成。

これには驚かされました。

 

日本とドイツをまたにかけた壮大な物語をひとつの舞台に押し込むのは確かに舌足らずになりがちだし、じっくりと物語の大きさと深さを観客に感じ取ってもらうためにも、二部構成は素晴らしいアイデアだと思う。

 

しかも「日本篇」と「ドイツ篇」で視点を変え、手塚治虫がこの作品に託した「正義とは何か」という問題を、日本側とドイツ側の両面から描いていくというスタイルに魅了されました。

あの第二次世界大戦を背景に、日本側の「正義」とドイツ・ナチス側の「正義」をともに描くことによって、「正義」というものの相対性が浮き彫りになる仕組みです。

ちょっと芥川龍之介の「藪の中」的手法ですが、舞台でこういうスタイルは珍しい。

すごく文学的なアプローチだと思いました。

 

舞台を観た後、脚本・演出の倉田淳さん(この劇団の紅一点!)と峠草平役の曽世海司さんにインタビューさせていただきました。

中村うさぎさん
「今年は戦後70周年ということで、この『アドルフに告ぐ』を久々に再演されたんですね」

倉田淳さん
「そうなんです。先代がこの作品に惚れ込んで舞台化したのが2007年ですから久々の再演です」

中村うさぎさん
「この舞台に込めたメッセージは何でしょう?」

倉田淳さん
「やはり劇中のアドルフ・カウフマンの台詞『正義とは何だったんだ』ですね。この作品には三人のアドルフが登場します。神戸に住むユダヤ人のアドルフ・カミル、彼の幼馴染で後にナチス将校となるアドルフ・カウフマン、そしてあのアドルフ・ヒットラー総統。この三人がそれぞれの『正義』を信じて生きる姿を通して、『正義』の多面性を描きたかったんです。それで今回は『日本篇』と『ドイツ篇』の二部構成にしました」

中村うさぎさん
「そう! その二部構成が面白いなと思って」

曽世海司さん
「そうですね。両方観ていただくと、また別の物語が見えてくるんですよ。役者もふたつの別々の舞台をこなすから頭を切り替えないと(笑)。じつは今も『日本篇』を終えた直後ですけど、僕はもう次の『ドイツ篇』で頭がいっぱいの状態です」

中村うさぎさん
「役者さんも大変ですよね。そうそう、この劇団は男性が女性役も演じるんですよね」

曽世海司
「はい。僕は今回は男の役ですけど、他の舞台では女性の役も演じますよ」

中村うさぎさん
「女性役を演じることに違和感はないですか?」

曽世海司さん
「いえ。むしろ女性役を演じながら、『そうか。男性と女性の違いはあっても同じ人間なんだよな』と感じますね」

中村うさぎさん
「この『アドルフに告ぐ』は同じアドルフという名前の三人の男たちのそれぞれの戦いの物語ですけど、登場する女性たちもそれぞれの人生を懸命に戦っていて印象深いですよね。『日本篇』『ドイツ篇』に加えて、女性の視点から描いた『女性篇』も観たいなと思いました」

倉田淳さん
「それ、いいですね。ぜひやってみたい。女性キャラも魅力的な人が多いですからね、この作品。そうそう、ご覧いただいた『日本編』には登場しませんが、ヒットラーの愛人エヴァ・ブラウンも登場するんですよ。彼女も興味深い女性で」

中村うさぎさん
「エヴァ・ブラウン! 最後までヒットラーの傍にいて一緒に死ぬ女性ですよね。彼女の人生も面白そう! あと、芸者やりながらスパイやってる女が出てくるでしょ。殺されちゃうけど。あの女も興味深い。マタハリみたいで」

倉田淳さん
「ですね! 私、少女漫画も大好きで、萩尾望都さんの『トーマの心臓』も舞台化したんです」

中村うさぎさん
「ああ! 私も思春期は萩尾望都に育てられたんじゃないかってほど影響受けましたよ。『トーマの心臓』大好きです。その舞台も観たいな」

曽世海司さん
「あと、萩尾さんの作品では『11人いる!』も舞台化してますよ」

中村うさぎさん
「萩尾望都の代表的なSF作品ですよね。あれも面白かった」

倉田淳さん
「ぜひ、そちらも観に来てください」

中村うさぎさん
「行きます、行きます! 楽しみだ~!」

 

というわけで、さまざまな名作漫画や文学作品を舞台化しては話題をさらっている「スタジオライフ」、この「アドルフに告ぐ」も紀伊国屋ホールで7月11日から8月2日までという異例の長期間上演です。

それだけ期待が集まっているということでしょう。

 

男性ばかりの劇団で女性役も男性俳優が演じるというユニークさもさることながら、そのような劇団で脚本と演出を手掛けるのが女性だという事実にも深く感銘を受けた中村です。

しかも私と同じ萩尾望都ファンだなんて最高!

 

倉田さんとはぜひ今度、萩尾作品について熱く語り合いたいと思いました。
彼女たちが舞台化した「トーマの心臓」も、「アドルフに告ぐ」と同様、「罪とは何か、愛とは何か」という深遠なテーマを鋭く掘り下げた名作漫画です。

最後に、倉田さんの印象的な言葉で締めくくりたいと思います。

 

「8年前に上演した時は、日本はまだ平和でのんびりしている国でした。でも今回の上演ではすっかり時代も変わり、なんだか戦争でも起こりそうな怪しい空気に包まれています。そのようなときに、この作品を上演することには大きな意味があると思うんです。手塚治虫先生が託したメッセージ『正義とは何か』を、皆さんにもう一度噛みしめていただけたら嬉しいです」

本当にそのとおりです。

 

こんな時代だからこそ、我々は「正義」という概念の恐ろしさを肝に銘じなくてはならない。
手塚治虫が我々に遺した渾身の反戦漫画「アドルフに告ぐ」を、斬新な演出と素晴らしい演技による「スタジオライフ」の舞台でぜひ堪能してください。

 

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店名 紀伊国屋ホール
住所 〒163-8636 新宿区新宿3-17-7 紀伊國屋書店新宿本店4F
電話 03-3354-0141
公演 2015年7月11日~2015年8月2日(スタジオライフ公演「アドルフに告ぐ」)
地図

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